腎の生理機能
- 蔵精、発育と生殖を主る
- 水を主る
- 納気を主る
蔵精を主り、成長・発育・生殖を主る
蔵精とは、この精気を貯める(貯蔵)することで腎の生理機能を指している
精には先天と後天の精があり
先天の精とは、父母から受け継いだ生殖の精(出生前に存在しています)
後天の精とは、五臓六腑の精です。(出生後は先天の精を補充・滋養している)
成長・発育・生殖を主る
腎気の盛衰は、成長・発育・生殖に深く関わっています。
人の成長過程(幼年期)で、歯が生え替わったり、髪の毛が伸びたりといった変化を起こします。
青年期では、生殖機能の成熟を促す物質(天発)の作用により男子では精液を作り出し女性では、月経が来潮するようになり性機能が成熟してきます。
老年期になると腎中の精気は衰え、精機能と生殖機能は衰え、消失していきます。
腎の蔵精機能が低下すると不妊症・脱毛・歯のぐらつき・発育不全などの症状が出てきます。
腎中の精気・腎陰・腎陽の関係
腎中の精気は、生命活動の基本中の基本になり腎陰と腎陽の根本であります。
腎陰と腎陽の2種類に分けられ
腎陰とは人体における陰液の根源であり、臓器・組織を潤し、滋養しています。
腎陽とは人体における陽気の根源であり、臓器・組織を温め、推動する作用があります。
水を主る
体内での水液の貯留・分布・排泄を調整する腎気の作用をさします。
正常な状態では、水液は胃に行き、脾によって転輸されて、肺によって全身行き渡って
三焦を通り体の中で循環するものとしないものに分けて、循環しないものは、汗と尿に変化して体外に排泄されます。このようにして、体の水液代謝のバランスをとっています。
腎の気が低下したら、水液代謝のバランスが崩れてしまい、水腫、小便が出にくくなったりしてきます。
納気を主る
呼吸は肺が主っていますが、吸気は腎に下ります。
吸気を腎に納めるという腎気の働きの事を「摂納」といいます。
このことから、「肺は呼気を主り、腎は納気を主る」とされています。
腎の気が正常であれば、肺からの空気が腎におさまり肺と腎の空気の流れが円滑に循環します。
しかし、腎の気が低下すると、吸入した気は腎に納まらず、少し動いただけで息切れしたり、呼吸困難になったりします。
腎の五行との関係
恐は腎の志
恐とは物事に対しておそれおののく精神状態のことを示します。
恐と驚きはにているが、驚きは意識せず突然受けるショックであり
恐は対象を明確にとらえた精神状態、いわゆるビクビク、おどおどした状態です。
恐と驚きも日常生活に対する影響という点からいえば、良くないので両方とも腎を損傷することもあります。
唾は腎の液
唾は口の中の津液であり、唾液のなかで比較的ねっとりしたものです。
唾は腎精の変化したものでこれをのも混むと腎中の精気を滋養できる。唾が多すぎたり
長時間ダラダラ流れてしまうと腎中の精気が消耗されていきます。
この話しから、古代の仙人は口の中に唾液をいっぱい貯めて唾液を貯めてそれを飲み込む事で腎精を養ったこともあったみたいです。
体は骨に合し、骨を主り髄を生じ華は髪にある
腎精には髄を生じる作用があります。髄はは骨の中にあり骨は髄によって滋養されます。
腎精が充分にあると、骨髄を化生するのに充分な源があります。髄により充分に滋養されると、骨格は丈夫になります。
腎精が少なくなってしまうと、骨髄が不足し骨に栄養を供給する事が出来ないため骨格はもろくなり、ひどいときは発育不良になってきます。
老人では骨密度が低下し、骨折しやすくなってきます。
腎は髄を生じ、骨を主っていますが、「歯は骨の余り」といわれるように歯も腎精によって滋養されています。腎精が充分にあれば歯はしっかりしているが、不足していると歯はぐらつき、最終的に抜けてしまう。
髄は骨髄と脊髄の2種類に分けられており、脊髄は上部で脳につながっており、脳は髄が集まって出来ています
精と血はお互いに養う関係にあり、精が多ければ血も旺盛になり、毛髪につやがあるのは
血の働きが旺盛な証拠であり、ここから髪は「血の余り」といわれています。
腎の精気が充分にあると髪の成長あるいは脱落や艶の有る無しにも関係してきます。
腎精が比較的に充分にある青年期・壮年期は毛髪につやがあります。年齢を重ねた老年期では徐々に毛髪のつやが無くなり白髪が増えて、抜けやすくなってきます。
耳および前後二陰に開竅する
耳の聴覚機能は腎の精気と関係があります。
腎の精気が充分にあると聴覚は鋭敏となり反対に腎の精気が不足すると耳鳴り、難聴などが現れます。
老人が聴力の減退がおこるのは、腎の精気の衰えが原因です。
二陰とは前陰(外生殖器)と後陰(肛門)の2つです。
尿に関しては膀胱の働きと腎の働きが関係していて、また、大便の排泄も腎の働きが関係しています。




(針灸学基礎編 第三版より引用しました)